
第6回学術大会長 中村調理製菓専門学校理事長、校長
中村 哲 なかむら てつ
第6回を迎えます調理技術教育学会学術大会を、本年8月7日(木)・8日(金)の2日間、福岡市の中村調理製菓専門学校で開催いたします。
これまでの5回の大会は、東京で3回、そして大阪・京都で各1回と、いずれも日本の中心部とも言える地区で開催されてきましたが、地方での開催は今回が初めてとなります。現在、全国には調理師養成施設が約270校あり、その入学定員の総計は約23,000人ですが、東京・大阪・京都には施設数の16%があり、その入学定員は全国の28%です。この数字からもわかるとおり、養成施設の大半は地方にあります。しかしながら、養成施設に限らず、地方は過疎化や中央との経済格差など、さまざまな問題を抱えています。日本を含む世界中の多くの国々の料理は地方料理の集大成であり、地方が疲弊し、地方料理が衰退していくことは、その国の食文化全体が衰退することにも繋がります。その中で、一部の地方では先進的な調理師や飲食企業が大都市ではできない活動を展開しています。今回の大会では、初の地方開催ということで、大都市とは異なる発信や議論を展開できればと考えております。
そのような観点から、今回のテーマは「調理業界の多様性から養成教育を考える」としました。調理師養成施設は1959年に全国で17校が誕生し、以来66年間が経過しました。その間、わが国の飲食業、外食産業は飛躍的な発展を遂げ、また日本の調理技術は世界からも注目を集めています。そして、この業界もさまざまな多様化する社会の影響を大きく受けています。上述の大都市と地方の問題や、極めて高い職人的な技術の店と大衆化した店の共存、さらに画期的な調理技術の進展やインバウンド客の増大などが挙げられます。しかし、調理師養成施設がこれらの諸問題に十分に向き合った人材養成を行ってきたかというと私どもの施設も含めて疑問に感じる面があります。今回の大会では、これらの点に対するこれからの調理技術教育を考える契機になればと企画いたしました。
具体的なプログラムとしては、1日目の基調講演およびパネルディスカッションでは「現代の調理業界における多様性と調理教育」について、シンガポールやフランス・パリで活躍後にあえて福岡を選んで活躍するレストランSOLAの𠮷武広樹シェフ、中国・チベット生まれで全国的に注目される大分県湯布院ENOWAのタシ・ジャムツォシェフ、外食産業の中にあって人による調理技術に重きを置くロイヤルホールディングスで人材教育を担当する藤田敦子取締役、そして養成施設からは広島酔心調理製菓専門学校の原田優子校長に登壇していただきます。実習教育関連分科会および食品衛生関連(HACCP)分科会の分科会報告でこの日のプログラムは終了します。2日目は国立医薬品食品衛生研究所の野田衛客員研究員による衛生管理研修会「ノロウイルス食中毒・感染症の現状と対策」を催します。午後には味覚センサー研究とその実際についての第一人者である中村学園大学大学院の都甲潔特任教授による特別セミナー「味覚センサーで変わる調理の世界」と、引き続いて味覚センサーを応用した調理デモンストレーションを行います。そのほか、さまざまな口頭発表、ポスター発表もある予定です。
是非とも多くの会員の皆様に九州・福岡の地にお越しいただければと存じます。また、直接のご参加が難しい方々におかれましては、後日に配信のオンデマンドでの参加をお願いいたします。
最後になりましたが、今後の皆様のご発展とご活躍をお祈り申し上げ、学術大会開催のごあいさつとさせていただきます。